I love New York__Casiopea

b0021712_21154663.jpg  スタジオやライブハウスの現場においては、『コンソール(録音卓)直接入力問題』と いうのがある。『コンソールに直接エレキギターとかエレキベースを接続してはイカン』というやつである。今回は諸般の事情により、これについて熱く語りたい。

 スタジオ等でコンソールに直接電気系楽器を接続する場合、一般的には楽器から電気信号Soutが出力され、ケーブルを経由してコンソールに電気信号Sinが入 力され、それがコンソール内部でゴチャゴチャと信号処理されて最後に電力増幅されモニター スピーカを駆動することにより音が出る訳である。

 ここで問題になるのが電気系楽器の出力インピーダンスZoutとコンソールの入力インピーダンスZinという耳慣れない代物である。インピーダンスとは『電気信号を流れにくくする抵抗のようなモノ』であるが、その表現を借りると『出力イ ンピーダンスとは電気信号を出にくくするモノ』、『入力インピーダンスとは電気信号を入れ にくくするモノ』と考えれば良いだろう。

 一般的に、電気系楽器からコンソールに入力される電気 信号Sinは下記のような式で表現される。
b0021712_21271817.jpg 電子回路理論では、このようなケースにおいてインピーダンスはZin=Zoutが理想であると言われている。まあ、直感的に考えてもそうでしょうね。それで、接続時にZin=Zoutが簡単に実 現できるのであればメデタイのだが、実は事はそんな簡単なものではない。

 実際に はZoutがZinと値が大きく異なる事も多いのだ。問題なのはZoutがZinよりかなり大きな場合である。上記の式によると、この場合は式の分母のZinは数式的には無視できる事になるため、電気信号SinはSout×Zin/Zoutにほぼ同等となる。

 ZoutはZinよりかなり大きいので電気信号のレベルも相当小さく なり、信号をかなり増幅する必要がある。そして、問題がもう一つある。実は、一般的な電気系機器の入力、出力インピーダンスというのは電気信号の周波数の高い、低いに応じてその値が変化する事が多いのだ。格好良く表現すると、周波数特性がフラットではないのであ る。

 前述の接続構成においては、ZoutとZinの周波数特性は異なるだろうから、その特性の違い がSinの信号レベルに影響するというやっかいな状況になるのである。しかも、前述のよう に信号は大きく増幅をかけているので、周波数特性の違いによる変化分も同様に大きく増幅さ れるのである。

 要は音量や音質がヘロヘロと変化して非常にやりにくくなるのだ。一方、ZoutがZinよりかなり小さい場合は上記の式からもわかるように分母のZoutが数式的に無視できるの で、Sin=Sout×Zin/Zin=Soutとなる。つまり、楽器から出力された信号がそのままコンソールに入力されることになる。

 しかし、ここで問題になるのが『Zinの値をどうするか?』である。『ZoutをZinよりできるだけ小さくしたいんだから、Zinはできるだけ大きくすれば良いんじゃないの?』と言う貴兄の意見は基本は正しい。しかし、その場合に大きな問題が発生する。

 Zinを大きくすると、今度はノイズを拾い易くなるのだ。したがって、コンソールにおいては『ノイズを拾わないように するために、Zinはできるだけ小さくしたい・・』という相反する要求が発生する。

問題を整理すると下記となる。

(1) ZoutがZinよりかなり大きい場合は処理される電気信号の周波数依存性が大きくなり、音量や音質がコン トロールしにくくなる。
(2) Zinを大きくするとノイズを拾いやすくなる。

 『じゃあ、ノイズの問題でZinが余り大きくできないのであれば、逆にZoutをできるだけ小さくすればZoutをZinより相当に小さくできるんじゃないの?』と考える事もできる。全くその通りなのであるが、残念ながら一般的なエレキギターやエレキベースではそれは難しい。

 実はこれらの楽器群は一般的にZoutが高い。何だか、あっちを立てればこっちが立たずのオンパレードみたいな話ばかりである。

 エレキギターやエレキベースにおける電気信号の処理についてはご存じの方も多いと思うが、鉄製弦の振動をピックアップコイルと呼ばれる部品が電磁誘導の働きによって微少電流の変化とい う形で拾い出し、それを電気信号として出力するという原理である。

 そして、そのピックアップコイルというのがインピーダンスが高い電子部品なのである。したがって、エレキギターやエレキベースは一般的には出力インピーダンスが相当高いことになっている(数百KΩ程度)。

 一方で、出力インピーダンスが程良くコンソール並になっているのが電子キーボードやらの一群である。これらの機器は『電源』を利用するので、電子回路的には出力インピーダンスをある程度自由に設計できる。俗に言う『アクティブ回路』による機器である。したがって、コ ンソールの入力インピーダンスにほぼ準じた出力インピーダンス(数KΩ程度)に設計されている。

 ここまでの学術的(?)なポイントを理解した上で、ミュージシャン的にポイントを整理すると下記になる。

(1)エレキギターやエレキベースをそのままコンソールに接続すると音的にヤバイ。
(2)キーボード類はOK。
(3)ダイナミックマイクは厳密に言うと微妙だが、まあ何とかOKらしい。


さてここで『んんん?』と反応する理系型ミュージシャンがいるはずだ。つまり、下記である。

・自分のエレキベースはアクティブ回路型だ。電池メンテが面倒くさいけれど・・。、
・通常のイフェクターってアクティブ回路型の機器がほとんどだろう。電池メンテが面倒くさ いけれど・・。

 アクティブ型機器は出力インピーダンスを低くするように設計できるのだから、これらの機器を利用すれば『コンソール入力問題』は簡単に解決するのではないだろうか・・・という事になる。

 特に、現在ではアクティブ型のイフェクターを利用するケースは非常に多いから、経済合理的にも問題解決は容易だろう・・・ということになる。しかし、残念ながら事はそう単純ではないのである。またまた、ややこしい話でうんざりしてきたので、今回はひとまずここまでにしたい。



 ところで肝心のアナログレコードであるが、久しぶりにカシオペアである。セカンドアルバムからシングルカットされた初期の名曲である『アイラブニューヨーク』。事情は良くわからんが、JALか何かのCMで採用されていた。向谷氏のボコーダが懐かしい。

 実はカシオペアのギタリストである野呂師匠はコンソール直接入力型(所謂Line録り)でレコードを製作しているらしい。理由は、アンプの特性に左右されない音を使いたい・・ということのようだ。このあたりにも、カシオペアというバンドのオリジナリティが感じられるのである。

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by crossovermiddle | 2013-10-27 21:54 | 音楽全般 | Trackback

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